・10/07「親切な現場(るろうに剣心)」
9月29日に「るろうに剣心」の撮影で姫路に行って来ました。改修工事の最中の姫路城のすぐ横の現場です。
朝の8時に撮影所を出発。10時ごろに予定通り、撮影現場近くのビジネスホテルに到着しました。
到着すると早速、撮影の為の準備です。
この作品は東映作品ではない為に、監督も含めスタッフのほとんどがこの作品の為に東京から来ているスタッフです。
ですから、自(おの)ずとシステムが東映と違います。
メイク担当とかつら担当が別々なんです。先ずはメイクさんのエリアに入り鏡の前に座ります。
メイクさんが本当に丁寧に、顔にどうらんを塗ってくれます。
これが東映だと、メイクさんに指定された色を自分でサッサッサと塗っていくんですが、ここではそういう訳にもいきません。
自分では何も出来ず動く事も出来ずに、メイクさんがどうらんを塗ってくれるのを椅子に座ってジッと待つ事にはあまり慣れていず、
もどかしい感じがします。
かつらのエリアは、東映京都のスタッフ。見慣れたスタッフがいて、少し安心しながらかつらを乗っけます。
衣装は松竹のスタッフ。私たちが自分で衣装を着る事が出来る事を知っているスタッフなので、
ちょっとしたお手伝いだけをしてもらいながらアッという間に衣装を付けます。
こういうスタッフの中では、自分たちを信用してもらっている感じがして心情的にも本当に楽です。
撮影の支度が終ったら、息付く暇もなくワゴンで撮影現場に向かいました。
昼間の撮影は、戦いが終わり、死んでいるシーンです。
東京のスタッフが多い為、ここでも私たち役者をとても親切に扱ってくれます。
スタッフが事あるごとに、「このカットには出ませんので、こちらでお待ちください」と
椅子を持って来てくれたりします。
気を遣ってくれる分だけ、こちらも普段以上にスタッフに気を遣ってしまい、ちょっと疲れます。
このシーンは雨が降っているシーンだったので、昼間の撮影が終わると水でびしょ濡れの上に血みどろ。
夜間の撮影の為に、きれいさっぱりと洗い流さなければなりません。
朝のビジネスホテルに戻り、ホテルの一室のシャワーをお借りしました。
「雨濡れ」という事は分かっていたので、替えの下着を家から持ってきていたのですが、
今回は驚いた事に新しいパンツまで用意してくれていました。こんな事は初めてです。
シャワーを浴びた後、再び撮影の支度です。メイクに行き、かつらを付け、衣装を着ます。
夕食弁当を5分程で急いで食べて、またワゴンで現場に向かいます。
いよいよこれからが本番です。剣心と戦います。最初にシーン全体の段取りをして、その後、ワンカットずつ撮影していきます。
この撮影の合間にも、スタッフがいろいろと気を遣ってくれます。
「寒くないですか」、「こちらでお待ちください」、「飲み物を持って来ましょうか」などなど。
今まで経験してきた撮影現場では、(悪く言えば)結構放ったらかしにされているのですが、私個人的にはその事の方が慣れていて、
待機中の時間も自分が好きなように過ごせるという事もあり、放ったらかしにされている方が本当にリラックスできます。
東映作品が少なくなり、東京のスタッフによる作品が東映京都撮影所をベースに撮影する作品が多くなって来ました。
これからも今回のような撮影現場が増えてくる事でしょう。
(良く言うと)役者を懇切丁寧に扱ってくれる撮影現場。
(悪く言うと)役者をお客様扱いしてくれる撮影現場。
私はやっぱり、何から何まで気遣ってくれる撮影現場よりも、
必要な所だけ気遣ってくれてその他の部分では放ったらかしにしてくれるような
昔ながらの東映や松竹の暖かい現場の方が好きです。
撮影が終わり、ビジネスホテルへ戻る為のワゴンに乗り込んだのが、午前 5時8分。
徹夜での撮影は何年振りでしょうか。ここ10年以上は経験していないような気がします。
午前 7時半ごろに撮影所に帰所。一晩中戦っていた為にまだ興奮が続いている身体で、我が家に自転車で帰りました。
(Oct 07,2011)
・02/24「追加のセリフ(ホンボシ)」
先日は、ホンボシの撮影でした。
役柄はラジオ局の局員と言う事で、本物のテレビ局を撮影に使わせていただく事になりました。
テレビ局のKBSの局内に入るのは今回が初めてです。
朝の八時に撮影所を出発。KBSは撮影所から近いのですぐに到着しました。
KBSの局の入口付近で、芝居用の靴に履き替え、芝居用のネームホルダーを首に掛けながら準備をしていると私の名前を呼ぶ声が。
「はい!」と声がする方に向かうと、そこには助監督が。
「おはようございます。宜しくお願いします」と挨拶をすると、すぐにこの番組のプロデューサを紹介されました。
私は監督の他、現場のスタッフとは良く接する事もありますが、プロデューサともなると
撮影所で顔を合わせる事はあっても話をする事はめったにありません。
「何事だろうか」、心中に思いながら、「おはようございます。宜しくお願いします」と挨拶をすると、一枚の紙が。
「セリフが追加になりました」との事。
撮影においてセリフの変更や追加などは良くある事ではありますが、
その改訂稿は演技課の担当者に渡されるか、助監督に渡されるのが普通なんです。
撮影当日に現場に着いてから追加原稿を貰うなんて、過去に数回経験はありますが、めったにない事です。
しかも、プロデューサの方から直接だなんて・・・。
とにもかくにも、覚えるしかありません。
それにしても、撮影当日に私に追加原稿を渡すなんてあまりにも無謀です。
私はセリフを覚えるのに特に時間が掛かると言うのに。
「無理です!」
とも言えず、「はい、がんばってみます」と。
撮影まで時間がありません。撮影に使わせて頂いている階では、生放送を今、まさにオンエア中だし、
周りには興味深い機器が並んでいると言うのに局内を見学している余裕はありません。
普段であれば、一言一句、セリフを覚えようとする私ですが、あきらめました。
追加のセリフの意味だけ捕らえ、後は私の口が勝手に動いてくれるような言い回しを考えます。
私が出ていないシーンの撮影が進行している間、ずっとひたすらこのセリフを呪文のように繰り返していました。
ブツブツブツブツ・・・。
なんとか撮影は終了し、その後、プロデューサの方にも挨拶に挨拶に行きましたが、果してうまく行ったのでしょうか。
私が話をする相手の高島政伸さんには迷惑はお掛けしてしまったかも知れません。
どうも、すみませんでした。
不安でいっぱいの撮影でしたが、この回の放送はもうすぐです。
(Feb 24,2011)
・01/26「特殊メイク(砂の器)」
先日、三重県の三岐鉄道富田駅でロケーションでした。
この日は、私が大好きな役者さんの吹替という事で、私の顔は映らないものの、嬉しい撮影でした。
この役は、殺人事件の被害者で、身元を隠す為に顔を石で滅茶苦茶殴られてた状態で線路の上に死んでいるというものでした。
そこで、メイクさん特製の顔面マスクの登場です。
現場でそのマスクをメイクさんに見せてもらうと・・・目も鼻も口もなく・・・。これが私の顔の上に乗るのです。気持が悪いものです。
しかも、一旦乗ってしまうと、目も見えない、しゃべれない、動く事も難しくなるのでメイクさんにお願いして
撮影直前まで装着するのを待ってもらいました。
この日は、これまた極端に寒い日で、
衣装さん、進行さん、現場の皆さんが「カイロは貼ったか」「出番まで暖かくしときや」などと優しくしてくれて、
一時間ほど火にあたりながら出番を待っていました。
さ、出番がやってきました。現場に呼ばれてマスクの装着。
まず線路の上に私の頭が乗せられて、その顔の上にあのマスクを乗せられ、更に冷たい血のりが顔中やシャツの上にドボドボと塗られていきます。
私にはどんな顔になっているのか全く分かりませんが、
聞こえてくるのは「気持ち悪い」「こんなん発見したら、夜は寝れへんやろな」という声ばかり。
何とか、ワンカット終了です。ですが、このシーンはかなり長いシーンで撮影はまだまだ続きます。
その間、私はマスクをはずす事も出来ず、目も見えないので起き上がる事も出来ず、
私が映るカットの撮影の時も映らないカットの撮影の時も、私は絶えず冷たい地面の上に寝たままでした。
進行さんが火を私の近くまで持って来てくれたり、沢山のカイロが内側に貼られている毛布を私に掛けてくれたりしますが、やはり寒い。
本番中は何とか、息を止め、震えを止める事が出来ますが、カメラが回っていないと自然と体がガタガタ震えてきます。
運ばれて担架に移されて、担架の上でもなおもガタガタ震えている私に、玉木宏さんが優しい声を掛けてくれます。
「大丈夫ですか」「このカットは映っていませんからね・・・」などなど、気遣ってくれます。
玉木さんは、私を担架まで運んで来るのを手伝った直後のカットなので、私のすぐ右横にいらっしゃいました。
本当に嬉しい気遣いでした。
結局、そのシーンの撮影が終るまで、二時間以上はマスクを付けたまま、現場から聞こえる声や音だけで現場を把握してながら、
地面に転がっていた事になります。
その後、ラッキーな事に富田駅のシャワー室をお借りする事が出来て、
温かいシャワーを全身にあびる事が出来、文字通り生き返る事ができました。
生き返った後も少し撮影は残っていましたが、もう目も見えるし、撮影の合間は自由に動けるし、何の困難もありませんでした。
皆さんの暖かい気遣いのお陰で、無事その日の撮影は終了。さて、どんなシーンになっているのか、今から放送が楽しみです。
(Jan 26,2011)