・12/07「上司の役(科捜研の女)」
年末です。忙しいです。毎年恒例のお正月のニューオータニ公演の準備があります。
台本こそ先月末までには書き上げましたが、そのドラマの中での殺陣を考え、ドラマの中で使用する音楽を考え編集する作業があります。
それに、これまた恒例のお正月の『寿玉すだれ』のリハーサルがあります。
私事ではありますが、大掃除や年賀状作成などの作業もあります。
そんな忙しい中、大変に有り難い仕事を頂きました。
『科捜研の女 13』に登場する広報課係長の三枝義史と言う役です。レギュラーで出演される方の上司に当たる役柄です。
以前にこの日記で「刑事魂」の話の中で書いたのですが、私も来年で五十歳。
今までの手下や部下と言う役柄ばかりでなく、上司の役を頂くようになりました。
嬉しい反面、非常に戸惑いがあります。
いつもチョロチョロしているこの私に上司の役が出来るのか。ちゃんと年相応の上司に見えるのかとても心配です。
既に二話分の撮影が終っていますが、どう映っているんでしょうか。もうすぐ放送です。ドキドキします。
しかし、越えなければならないハードルです。これからも、がんばります。
(Dec 07,2013)
・07/06「18年越しでの同じ役(雲霧仁左衛門)」
NHK、BSプレミアムで放送される雲霧仁左衛門で役を頂きました。
先日、台本を頂いて、家に帰って早速読みました。
読み終って・・・???
何だか以前にも似たような台本があったような。
雲霧はリメイクですから、前回の放送で見たのだろうと考えましたが、
自分の役のシーンを読み返してみると・・・???
何か、このシーン、知ってるぞ!?
そうです。1995年放送された雲霧仁左衛門の撮影にも参加していて、しかも、その時と全く同じ役なのです。
人相書きに書いてある文字を読み上げる町人の役なんです。
1995年の時の監督は斎藤光正監督でした。その撮影の時の事は今でも忘れられません。
一度リハーサルが終った後に監督の方を見ると、監督が自分の右手を見て指を折り曲げているんです。
「なるほど、この町人は、この悪人を捕えた時の報酬の五十両がいかに高額であるのかピンとこないので、
指で数えてみて、改めてその高額の金額で驚く。そんな芝居をしろ!」
と、監督は口には出さなくても私に指示しているんだなと分かりました。
ですが、人相書きの文字をただ読むと言うだけの役だったのですが、当時の私には、指を折り曲げながら驚きながら読んでいくという芝居に自信がなく、
結局、その日はその芝居に挑戦する事もなく、監督の期待に応える事が出来ないままに撮影を終えてしまいました。
その時の事は、今でも覚えていますし、今でも後悔もしています。
そして、その時と全く同じ役が今回やってきました。台本を読み終えた後にすぐに18年前のこの出来事が頭に浮かびました。
18年前に斎藤監督の期待に応えられなかったこの芝居に今回挑戦しようかどうしようかと考えながら撮影現場に向かいました。
結論から言うと、やりませんでした。今や、18年前からすると技術も意識も度胸も進歩しているはずの私です。
この芝居をやろうと思えば、今では何なくこなした事でしょう。
ですが、カメラの位置やカット割り、その他の事を考えた時、「やっぱり、止めとこ」と判断しました。
斎藤監督、すみません。
それにしても、18年も経って、同じドラマの同じ役を再び演じる事になるとは・・。
本当に不思議な体験でした。
(Jul 06,2013)
・06/09「楽しかった撮影(幕末高校生)」
今回、李闘士男監督の映画「幕末高校生」に達治と言う役で関わる事になりました。
6月4日に私が出ているシーンはすべて撮影終了したのですが、本当に楽しい撮影でした。
と言うのも、私は役者の仕事を始めてから26年が経ちますが、その間に撮影の方法がどんどん変化してきて、
最近では「二台のカメラを同時に使用して、長回しをして数カット分を一気に撮影してしまう」という方法が主流になってきました。
この方法については、このサイトの日記のページなどでも私がよく書いている通りに、私が好きな方法ではありません。
と言うよりも今だに馴染めない方法です。
ワンシーンを撮影する為に、テストも本番も含めると同じ芝居を十回以上も繰り返す上に、
今撮影しているカットがそのシーンのどこの部分で、それをどのカメラが狙っているのか全く分からい事が多いまま撮影が進行してしまう事が多いからです。
ですが、この監督の撮影現場では、上記の撮影方法は取るものの、
芝居の無駄な繰り返しはしない上に、どのカメラが芝居のどの部分を狙っているのかもはっきりと分かります。
カメラが何を狙っているかが分かっているから、そのカットの為に(以前の撮影では、当たり前のように行っていた)
人物や出道具の位置をずらしたりする事や、時にはセッシュしたりする事もあります。
撮影が進むにつれて、私の頭の中ではそのシーンの映像が、まるでジグソーパズルが完成するように、次々と組み上っていきます。
しかも、他の組でありがちな「テストをやって十分程の修正、またテストをやって十分程の修正、またテストをやって十分程の修正。
その後に本番を二三度繰り返す」なんて事はありません。
次のカットの撮影の準備の為に三十分程の時間はかかるものの、準備が終って役者が現場に呼ばれると、
一回だけ確認のテストを行われ、その後すぐに本番になります。非常にメリハリが効いています。
この方法だと、どんなに長いシーンの長回しであっても、役者はそのワンテイクの為に一気にガッと集中する事ができるでしょう。
本当に気持ちが良いテンポとメリハリです。
それに加えて、最近の撮影では、各部所の分業化がかなり進んで来た為に各部所の作業が個別に淡々を進み、
役者としても監督やカメラマン、照明部、録音部からいろんな指示を受ける事が少なくなり、
自分の芝居だけをしていたら気が付いたら撮影が終っていたなんて事もよくあるようになりました。本当に寂しい感じの思いをしていました。
ところが、この組では、違います。監督からは次から次に芝居に関する感情やテンポなどの指示が出て、カメラマンからも立ち位置や体の向きやタイミングなど、
照明部さんや録音部さんからもいろんな指示が出てきます。
各部所からの指示をこなしながら芝居をしていくと言うこの感覚、
以前の撮影では当たり前だったこの「各部所が一緒になって映画を作っている」と言うこの感覚、
この感覚が私にとって今回本当に楽しいものでした。
本当に撮影が楽しいこの組でしたが、最後にもう一つ。私は今回のこの監督の手法が好きです。「決断の速さ」と「舞台的な演出方法」。
この二つが監督にあるからこそ、今回は本当に楽しい撮影になったのだと思います。
何はともあれ、5月6日に私個人がクランクインしてから約一ヶ月の撮影。私自身が撮影に参加した日が七日間。
この楽しかった撮影が終りました。
一緒に仕事をさせて頂いたメインキャストの皆さん、李闘士男監督、藤石修カメラマン、スタッフの皆さん、
本当にありがとうございました。
(Jun 09,2013)
・04/01「刑場(大岡越前)」
今日は大岡越前の撮影で、刑場の撮影でした。そこで、ある話を思い出しました。
以前に刑場のシーンを撮影した時の話です。
その日は冬の特別寒い日でした。俯瞰撮影の為にカメラマンがクレーン車に乗って、5メートル程上から撮影する時の事です。
カメラマンは、体を突き刺すような冷たい風が吹きすさぶ中、準備時間を含めて30分以上もクレーン車の上に立っていなければなりません。
本当に辛いでしょうね。
そこで、監督がカメラマンをねぎらいます。「こんなに寒い中、大変だなぁ。大丈夫か?」
カメラマンが一言。「昨晩は、裸足で甲冑を着たエキストラを雨降らしの中を何度も走らせたくせに・・」
これは、
「撮影はしたものの、編集の段階になると結局使わなくなると言うカットの為に、何度も何度も役者を冷たい雨の中を走らせて」と考えての一言だったんでしょう。
そんな言い方でした。このカメラマンの一言の後、案の定、監督は黙って去って行ってしまいました。
私がこの世界に入った頃は、監督もいつも現場にいて、
他のスタッフやキャストやエキストラのメンバーと共に走り回って撮影をしていました。
だからこそ、以前の監督は、現場でのスタッフや俳優たちの寒さ暑さの辛さ、危険なアクションでの緊張感を分かってくれていたと思います。
そして、スタッフや俳優たちは、
「監督が、あそこまでしてくれるんだから、俺もがんばってやろう。良い絵を作ってやろう」と言う気になったのでしょう。
今では、監督は現場から離れた所に置かれたモニタの前にいて、
ずっと映像を見ながら、指示などは助監督を走らせて現場に届けると言うような事が多くなってきました。
このような状況では、現場の様子は監督には分かってもらえないのでしょうね。
ですから、あの時も、監督がカメラマンに掛けた「大変だなぁ。大丈夫か?」と言う薄ぺらいねぎらいの言葉に対して、
そのカメラマンはあのようなきつい言葉で返したのだと思います。
なんたって、カメラマンは今も昔も、スタッフや俳優たちとずっと一緒に現場にいるのですから。共に身体を張って仕事をしているのですから。
この時、このカメラマンにとても共感を持ちました。感謝の気持ちもあり、とても嬉しく思いました。
カメラマンの心は今でも「活動写真屋」の心のままなようです。これからも、よろしくお願いいたします。
(Apr 01,2013)
上の内容に関して、こんな話も思い出しました。
あるドラマの撮影時の事です。最近の流行のように、役者は何度も何度も同じ芝居を繰り返し、それをいろんな角度から何度も何度も撮影すると言う手法です。
ちょっとしたシーンならば問題はないのですが、感情が昂るシーンでは、何度も繰り返しているうちに集中力はなくなり精神的にもボロボロになり、
その役者にかかる負担はかなりの物になります。
その様子を見ていたカメラマンの一言です。
監督が「次は、この角度から撮影ね」とカメラマンに指示すると、そのカメラマンの一言は
「監督、そのカット、要らんでしょ。さっきのカットの次が○○さんのアップになるんだから、そのカット、どうせ使わないんでしょ」。
実際に、この手法で撮影されたドラマを後日に放送で見て、あれだけ何度も何度も繰り返し芝居をして撮影したにもかかわらず、
かなりのカットが使われていないというような経験がかなりあります。
それにしても、カメラマンには、ドラマの中のカット割りや、現場の様子や役者の心情などが本当に良く見えているようです。
毎回毎回激怒しながらしゃべっているその役者にとっては、本当に嬉しい一言だったと思います。
(Apr 08,2013)
・02/23「雨(スペシャリスト)」
今年初めての役を頂きました。「スペシャリスト」と言う名前のスペシャルドラマです。
私は中原道弘と言う名前の小学校教諭の役です。
撮影日は全部で三日間ありましたが、不思議な事にその三日間とも雪か雨の天気でした。
一日目は、雪も散らつき風も吹きつける寒い日に薄着の衣装を着て、嵐山の中之島公園で死んでいました。
二日目も三日目も雨です。雨の日には、ロケは中止して撮影所内のセットに変更になる事が多いんですが、
今回は屋根の下での撮影と言う事でロケ決行でした。
本当に雨は嫌いです。ロケ現場まで向かうタクシーの中で、タクシーの屋根を打ちつける雨音を聞きながら憂鬱になっていました。
去年は、「映画村の仕事の日は雨が多いなぁ」とぼやいていたんですが、
今年は、映画村の仕事の日の雨と言う事は少なくて嬉しいのですが、その替わりに、
今年は撮影の日に雨が多いのかもしれません。
(Feb 23,2013)