撮影所で使われる言葉に触れてみたい。

このページは「土下佐ヱ門様」のご提案にて作成いたしました。
ここでは、東映京都撮影所で普段使われている言葉の中で おもしろそうなものをいくつか紹介してみました。

用語集

シャッター
カメラの前を、右から左 または 左から右へ横切ること。
きゃっきゃ
立ち回りの撮影時に、右から左へのシャッターと 左から右へのシャッターを 同時に行うこと。
なめ
カメラ手前に ちょっとだけ写っている物・人物を「なめ」といいます。 たとえば、カメラの手前に桜の花びらが写っていて その奥に上様が移っているとすると、「桜なめの上様」ということになります。 時には、「誰かの顔をなめる」こともあります。
より、ひき
俗に言うアップの撮影を「より」と言い、 カメラを遠くに持っていき広い範囲が写るように撮影することを 「ひき」と言います。 特に、「より」で撮影したすぐ後のカットが「ひき」の時「ぽんびき」、 「ひき」で撮影したすぐ後のカットが「より」の時「ぽんより」と呼んでいます。
ロング、大ロング
カメラから遠いところを「ロング」といい、 かなり遠いところを「大ロング」という。 使い方は、「ずーっとロングを歩いてくれ!」「ロングからカメラに向かって走ってきてくれ〜!」。
パン、ドリー、クレーン、ふかん、ハンド
撮影効果に関することです。
「パン」は カメラを横や縦に振って 写っている範囲をずらすこと。
「ドリー」は 設置したレールの上に「移動車」という車を置いて、 その上にカメラを置いて カメラをレールに沿って動かしながら撮影すること。
「クレーン」は 文字通り、 撮影用の「クレーン車」を使って カメラを縦横上下に自在に動かしながら撮影すること。
「ふかん」は 高い位置より役者や情景を見下ろす形で撮影すること。
「ハンド (ハンディ)」は カメラを「三脚」に固定せずに カメラマンが抱えて自由に動き回って撮影すること。
セッシュ
昔、ハリウッドで活躍していた「早川雪州」という役者がおりました。 この人がアメリカ人と撮影する時には あまりの身長差があるために 「雪州さん」の足の下に台を置いて撮影したそうです。 そこで今では、人物のみならず 物の下に台などを置いて 高さを上げることを 「雪州(せっしゅう)」 または「セッシュ」といいます。
長回し
東映京都撮影所では、ドラマを撮影する時、普通は 「数秒程度」の短いカットをいくつも撮影して それをつなぎ合わせて ドラマを作りますが、 時々、2・3分程度の非常に長いカットを目にすることがあります。 このように 長時間カメラを回しっぱなしにして カットを撮影することを 「長回し」といいます。
ワンシーン ワンカット
普通、ドラマの一つのシーンは いくつかのカットをつなぎ合わせて作りますが、 一つのシーンを いくつかのカットに割らずに 一つのカットで撮影することを、 「ワンシーン ワンカット」と呼んでいます。
つぶし
一時間番組を撮影する期間はだいたい 1週間です。 ですから、ゆっくり時間をかけて撮影をしているわけにはいかないのです。 そこで、ロケーションで夜のシーンを撮影する場合に、実際に「夜に」撮影するのではなく 昼間にカメラの露出を調整して撮影することで「夜のシーンに見せる」ことがあります。 これを、「つぶし」と呼んでいます。 ですが、最近では「つぶし」で撮影することは ほとんどありません。
また、メイクする時に 「ひたい」と「羽二重」の境目がわからないするために その境目にくっつける粘土のようなものも 「つぶし」と言います。
りゅう
時代劇の撮影では 「かつら」と「顔」の間に隙間ができないように 「のり」のようなもので 貼り付けます。 この「のり」のようなものを 「りゅう」と呼んでいます。 ちなみに この「りゅう」の名前は「ドンピシャン」です。 (すごいネーミングです。)
頭からかつらをはずす時は この「りゅう」の部分に「ベンジン」を染み込ませて はがれやすくしてからはずします。
チェック
ワンカット撮影するごとに 今撮影したばかりの映像を見て 写ってはいけないものが写ってないか、映像にノイズが入ってないかを確認します。 これを、「チェック」といいます。 役者もこのチェックを見て 自分の芝居を確認します。 以前の時代劇は フィルム撮影をしてましたので このチェックをすることはできませんでした。
ロールチェンジ
撮影をしていて、カメラの中に入っているフィルムの残りが少なくなってきたら、 フィルムを新しいフィルムに交換します。 このことを、「ロールチェンジ」と 言います。 また、録音テープを交換することや ビデオ撮影の場合のビデオテープを交換することを 「テープチェンジ」。 カメラのバッテリーをチェンジすることを 「バッテリーチェンジ」といいます。
つながり
たとえば、オープン撮影(映画村内での撮影)で一人の手代が「越後屋」に 入っていったとしましょう。しかし、その「越後屋」の内部の撮影は 後日にセットで撮影すると言うことがよくあります。 そんな時、「越後屋」にはいる前の手代と 入った後の手代が違う人物だと困ります。 そこで、この手代は「つながり」と呼ばれます。
だい大衆
出演人数が多いことです。何人以上が「だい大衆」とか決まっていませんが、 主観的には、7・80人で「大衆」、 100人以上で「だい大衆」と言ったところでしょうか。
天気待ち
東映京都撮影所の撮影では、ワンシーンを通して撮影することは滅多にありません。 ワンカットずつ撮影していきます。 そこで、同じシーンで 前のカットでは晴れているのに 次のカットになると曇っているということになると変な感じになるので、 前のカットが、晴れているときに撮影されていれば 次のカットも 晴れるまでじっと待ちます。これを、「天気待ち」といいます。
ほかにも、時代劇の中で飛行機や電車の音が聞こえるとまずいので 飛行機や電車が通り過ぎるまで待つ「飛行機待ち」「電車待ち」や 風がやむのを待つ「風待ち」など、いろんな「待ち」があります。
べっぴんさん
時代劇の屋内の撮影はよくスタジオが使われます。 そのスタジオの中のセットは基本的には柱しかなくて 撮影をする時にそのシーンに合う壁をはめ込んだりします。 それで、スタジオの中の柱には無数のくぎの穴が開いているわけです。 そこで撮影で柱が写るときには 穴だらけの柱を隠すためにベニヤ板をその柱に貼ります。 このベニヤ板のことを「べっぴんさん」と言います。
切り返し
たとえば、「上様」と「爺」が 向き合って会話をしているとします。 「上様」のセリフを撮影したあとに 次に「爺」のセリフを撮影するために カメラが反対側を向くことを「切り返し」といいます。
カメラが「爺」のほうを向くと「爺」のバックになる 壁をはめ込んだり、カメラをセッティングするために 「上様」側の壁を取り外したり、 ライトのセッティングをやり直したりして、大変時間がかかります。
ぬすむ
カメラのフレームや照明などの関係で、以前に写っていた場所からずれて芝居をすることを 「位置をぬすむ」といいます。 さっきのカットでは自分の前にいた人が 次のカットでは自分の後ろにいることもある。
また、誰かを見ながらお芝居する時 その人が本来いた場所を見ながら撮影すると カメラには横顔しか写らない時がある。こんな時に 話し相手がもっとカメラ側にいることにして 目線を本来の位置からずらすことを「目線をぬすむ」といいます。
なかぬき
役者は、全部のシーンに出ているわけではありません。そこで、 朝の 9時に出番があって 10時にそのシーンが終了したとします。 そして、その日の出番は 夕方 17時からのシーンに出ているとすれば、 10時から 17時まで待っていなくてはなりません。 この待っている間を「なかぬき」といいます。
もうひとつの意味は、 たとえば、上様と爺が 向き合って会話をしているとします。
カット割りが 「上様のセリフ」「爺のセリフ」「上様のセリフ」「爺のセリフ」と いうようになっているとすると、 「上様」「爺」「上様」「爺」とカットごとに「切り返し」 (カメラが反対を向くこと)をして 順番に撮影するより、 「上様」「上様」「爺」「爺」と撮影した方が、早く撮影できます。 この撮影の方法を「中抜き」といいます。
パイロット
シリーズ物の番組を撮影する時に 第一話はそのシリーズの方向性を決める 大事な一話になります。そこで、この第一話のことを 「パイロット」と呼ぶのでしょう。
2話撮り
撮影時間の問題から、撮影は 1話ずつを順番にとっていくことは 滅多にしません。
2話分を同時に撮影するわけです。ですから、メインキャストは毎日 2冊の台本を持って ややもすると話がごっちゃになりそうな中、撮影しているわけです。 この体制を「2話撮り」といいます。
ちなみに撮影する順番も、順番どおりではありません。 例えば、最初に「第2話」「第4話」を撮影して、次に「第3話」「第5話」。 その後で、「第1話」の撮影という事もあります。
内トラ
エキストラの数が少ない場合に、スタッフが衣装を着て出演することがあります。 このことを「内トラ」と呼んでいます。
オープン
「オープン」とは 「オープンセット」の略で つまり映画村のことです。
映画村には南北の大きい通りが 3本あります。
一番西側の通りから、「0丁目」「1丁目」「3丁目」と呼びます。 「2丁目」は「1丁目」と「3丁目」の間の狭い通りで、 「4丁目」は「3丁目」の東にある狭い通りです。
セット、スタジオ
東映京都撮影所には、 「No.1」から「No.19」までのセット(スタジオ)がありますが、 現在は「No.12」セットはありません。以前は存在したそうです。
ロケーション
「ロケーション」とは、 嵐山や大覚寺など 撮影所以外に出かけていき撮影することです。
その他に、東映京都撮影所内にある 18個のスタジオ内で撮影する 「セット撮影」と、 映画村内で撮影をする「オープン撮影」などがあります。
ロケ手当て
撮影関係にも いろんな手当てがありますが、おもしろいのが「ロケ手当て」。 ロケーションに行けば 手当てが出ます。その金額は今現在「100円」です。
ロケハン
撮影のクランクイン前に、どのシーンをどこで撮影するかを決めるために、 監督・演出部・撮影部などのスタッフが候補に上がっている場所に実際に行くことを 「ロケハン(ロケーションハンティング)」と 呼んでます。
ラス立ち
「暴れん坊将軍」でも「水戸黄門」でも、番組終わりの方の最後の立ち回りを 「ラス立ち」といいます。
ちょい立ち
ちょっとだけチャンバラをやることを 「ちょい立ち」 なんて言い方をします。「大立ち回り」の反対ですね。
本テス、ラステス
撮影の「本番」の前に行う「テスト」の中で一番最終の「テスト」のことを 「本番テスト」とか「ラストテスト」とか言う。略して「本テス」「ラステス」
まんま
「まんま」とは「そのまんま」の略です。 たとえば、みんなに「動くな!」と言う意味で「まんま!」と叫びます。 また、衣裳さんに「次のシーンは、衣裳換えですか?」と聞くと 時に「まんま」と言われます。
ちょんまげ
一口に「ちょんまげ」といっても、侍と町人では形が違います。 侍用、町人用のかつらをそれぞれ「御家人」「袋つき」と呼び、 「袋つき」のかつらは後頭部のところが 袋のように膨らんでいます。 同じ「袋つき」でも まげがまっすぐなのを「二つ折り」、 曲がっているものを「いなせ」と呼びます。 それから、頭の上のほうに髪がない普通のかつらを「中ぞり」、 髪があるものを「総髪」と呼んでます。
はやめし
通常 食事休憩は 12時からと 17時からの一時間ですが、 時に 11時から一時間と言うように食事休憩が早くなることがあります。 こんな時、「はやめしの 12時開始」などといいます。
逆に、食事休憩が遅れるときは「めしおし」といいます。 そんな時に、ちょっと軽く「パン」や「うどん」を食べることがあります。 この「パン」や「うどん」を 「つなぎ」といいます。
雨予定
ロケーションやオープン撮影では、たとえ雨のシーンであっても 実際に雨が降ってくると撮影が出来ません。かといって、撮影をしないのは 時間がもったいないので、雨が関係ないセットの中で”違うシーン”の撮影をします。 このように、雨が降ったときのための予定を「雨予定」と言います。 ですから、「雨が降ったら仕事があるけど、晴れたら休み」というような日もあります。
京撮
「東映京都撮影所」を「京撮」、 「東映東京撮影所」を「東撮」と呼びます。 通常、私たちは「京都撮影所」のことを単に「会社」と呼んでいます。
赤字、組ダブり
撮影作品が多い時には午前中は「暴れん坊将軍」の撮影で 昼からは「水戸黄門」の撮影というようなことがあります。 これを「組ダブり」と呼びます。
俳優会館の掲示板に「暴れん坊将軍」「水戸黄門」などのすべての予定表が張り出されており、 そこに各役者がどの組で撮影しているかが書いてあります。
もし、上で述べたように「組ダブり」をしていると、 役者が予定表を見落として「組ダブり」をしていることに 気づかないということがあるといけないので、 「組ダブり」の人の名前は赤色の字で書いてあります。 それで、「組ダブり」のことを、「赤字」といいます。
本編
「劇場用映画」のことを「本編」と呼んでいます。
または、東映京都撮影所内には ナショナル劇場を撮影している「太秦映像」という会社もあり、 この「太秦映像」と区別する意味で 東映京都の作品を「本編」と呼ぶこともある。
ひけひけ
たとえば、照明機材をセッティングするために 役者が危なくないところに一時避難したり、 または 撮影中に雨が降ってきて 役者やスタッフが避難したりする時に 「ひけひけ!」といいます。
時代劇の中で 侍達が不利な状態になって撤退する時に「ひけー、ひけー!」と いって撤退する、そんな感じです。
東映京都スタジオ
「東映京都スタジオ」は映画村を運営している会社で、私の所属事務所です。 東映京都撮影所で働く役者は 「東映京都スタジオ」のほかには、 「撮影所の演技者」か、「ジャパンアクションクラブ」 「タレントプロ」「宍戸大全チーム」「香住プロ」などの事務所に所属しております。